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瀬戸内寂聴

最後は突然、足が動かなくなり、朔美さんに同居を請い、優しい介護を受けてやすらかに永眠している。

朔美さんは「死んだらなにを書いてもいいわよ」という遺言によって、母との最期の同居の百八十六日を、深い愛をこめて書き、出版した。

さすが朔太郎の孫で葉子さんの息子だけに、その文章力は端倪すべからざるものであった。その本こそ、何よりの母への供養になった。

『奇縁まんだら 続』 日本経済新聞出版刊 2009年5月