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谷川渥

実は私自身、何年か前から空手を練習するようになったからである。先生は萩原朔美さん。萩原さんとの出会いがなければ、こんなことはありえなかったのだが、いい歳をしてすっかりはまってしまった。流派は常心門(宗師範・池田奉秀)、その「空海」支部の所属である。

ともあれ、私は空手を始めて、「肉体の知性」ということを考えるようになった。心技体とはよくいったもので、老若男女、職業の別なく、ここにはその人のもっているすべてが出てしまう。

そしてここでは、端的に力は美であり、美は力なのだ。かた、かたち、すがたに、美と力が結集するのである。文武両道とは古めかしい表現だが、
しかしつまるところ「日本の美」は、そのあたりに収斂するほかないのかもしれないという気がする。

日本の美100『かた・かたち・すがた』 平凡社コロナ・ブック 2000年1月